ローカライゼーションの現場に入る前、とある日系企業で、英語事務+日英翻訳・チェックのような仕事を担当したことがあります。
そのときに海外の翻訳会社と英語でコミュニケーションを取る必要が生じ、あわてて購入したのがこの一冊です。
通読した後もずっと会社のデスクにおまもりがわりにしのばせ、今も自宅の本棚の一番よい位置に置いています。
関谷英里子の たった3文でOK! ビジネスパーソンの英文メール術
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ディスカヴァー・トゥエンティワン (2014-05-23)
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著者の関谷英里子さんはNHKラジオの「入門ビジネス英語」を担当されていましたが、その中にも本書に通じるような英文メールのミニレッスンが含まれていました。
もしかすると、『同時通訳者の頭の中』を書かれた人ですと紹介した方が、ぴんとくる方も多いかもしれません(文庫版が出ていたのでそちらにリンクしました)。
現在はサンフランシスコに拠点を置かれていて、ブログも更新されています。
さて、本題に入ると、『たった3文でOK! 英文メール術』には、シーンごとに分けた50個のテンプレートも含まれてはいるのですが、メールが必要な状況に応じて辞書的に引くというよりは、一冊通読して関谷さんメソッドを体得するというのが個人的なお勧めです。
翻訳と通訳のお仕事を比べると、辞書の使用が典型的ですが、翻訳者はリアルタイムでのアウトプットを求められない分、自分の「外」に自分の能力を拡張できるアイテムを持つことができます。
ただし、英文メールの技術については、通訳的に、自分の内側に体得し、しっかりと自分のものにした方がよいと思います。
なぜなら、英文メールは、翻訳のように作品を作り上げるというよりは、相手のいるコミュニケーションだからです。
毎回テンプレート文を参照し直すというのでは書いている自分もストレスですし、レスポンス力も低下してしまいます。
その点、『たった3文でOK! ビジネスパーソンの英文メール術』は、最初の2章 (約30ページ) を読むだけで、関谷さんの述べる英文メールの基本方針に馴染み、いくつかのNG項目を把握することができます。その上で、残りの50個のテンプレートを応用編のように読んでいくというのがお勧めの使い方です。
「3文メール」というのも、関谷さんオリジナルではないと思いますが、いいですよね。
こういう制約は、「3文で書く」と数字を受け入れることで、創造性を刺激してくれると思います。
こんなに長くなるってことはメールの用件が複数になってるから2通に分けた方がいいかな(特にCCの多いスレッドで複数の話題が飛び交うと大変なので2通に分けた方がよいです)とか、細かい話はドキュメントにして添付したり Sharepoint とかクラウドのメモに上げた方がよいかなとか、工夫に向けたアイディアが出ますよね。
また、多言語ローカライゼーションの現場では、「阿吽の呼吸」のようなものに頼りすぎず、日本語リンギストとしての考えを日々のコミュニケーションの中で明確にしていくことが大切だと思います。
この辺りでも、メールを自分の主張2文で終えるだけでなく、+1文して日本語話者・翻訳者としては当たり前のことでも「理由」を書いてあげるというのは大切なコミュニケーションです。
「たくさん言った」を読み飛ばされて伝わらない可能性とともに、「言わなかった」から伝わらない、も当然ありますからね。
スケジュール調整などでも、ただ自分の希望を伝えるだけでなく、理由も書き添えてあげるのが、相手の納得感や信頼感を得る近道です。
(こういう「理由」を「言い訳」のように感じずに、オープンに書いた方がよいと思います。たとえば、「猫の急な病気による通院」は半休申請の立派な理由だと思います)
3文を超えたときにコミュニケーションを一工夫するヒントも、1文や2文のメールに+1文してチームワークを高めていくヒントも、両方手に入ります。
関谷さんの ビジネスがうまくいく「3文メール」テクニックを是非お試しください!