買い物の付き添いで、年末に 1 回、年始に 1 回、立て続けに新宿伊勢丹に足を運びました。
特に 2 階のバー・カフェのカウンターで休憩するのが気分がいいですね。
新宿の中でお気に入りスポットです。
さてさて、化粧品、靴、バッグなどのいわゆるハイブランドがどのように接客しているか、自分一人だとほとんど経験することもなかっただろうので、買い物の付き添いから学ぶことも多いです。
特に、自分の買い物じゃない分、あそこの店員さんおそらく新人なんだろうな、緊張してるな、など、ちょっと引いた目線で見たりしています。
特に今回は、タイトルに魅かれて買った次の本を読んだ後だったからか、なおさら考える部分がありました。
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傾聴のトレーニングではよく「今日、朝食はとられましたか?」という質問から会話を広げる練習をします。
(中略)
パンを主語にした質問でも、例えば、
「パン食が多いんですか。パンはどなたが買ってこられるんですか?」
と訊けば、
「かみさんです。でも、彼女も働いてるから、朝はいつもバタバタで」
「自分で買ってきます。両親は、ごはんにアジの干物が定番だから」
「それは娘の担当。おいしいパン屋を探して回るのが好きでね」
(中略)という話になるかもしれません。ちょっとした話を丁寧に聴いていると、いろいろなことが見えてきます。「ご家族構成は?」「どちらにお住まいですか?」
と、ストレートには訊けないことも、つかめます
これって、本当にうなづいちゃいます。
大串さんも書いているように、相手が大切なお客様だと感じているほど、こういったスモールトークを早々に切り上げて、自分の用意していた話・台本・スクリプトに逃げ込んじゃうことってありますよね。
もしくは、お客さんが本当に訊きたいポイントではなく、「ああ、あの話ね」と早合点して別の話をがーっとまくし立ててしまったり(今回の新宿伊勢丹でもある店舗でそういう場面がありました)。
そして、スクリプトに逃げたり、早合点して相手の真のニーズを聞き出せないのと同じくらい、相手のネガティブな話に乗りすぎたり、表現の面でベストなものをチョイスできないといった失敗も多いですよね。
ブランド以外のビジネスでも同じこと。「部長がいい加減だから」という愚痴を、聴いてはあげても、「本当に困りますね」などと、調子に乗ってはいけません。
ジュエリーを扱うハイブランドに、エンゲージリングについて問い合わせしたときのこと。
「エンゲージリングって、お値段はどれくらいですか?」
「いろいろご用意しておりますが、一番お安いものは30万円です」
「エントリーレベルでしたら、30万円からございます」
大事なエンゲージリングなのに、一番安いものや、ジュエリー初心者向けという印象を与えるエントリーレベルという言葉は失礼ですし、何より、夢がありません。
「ダイヤの選び方、例えば、カラット数によって、いろいろでございます。現在店頭にご用意のあるものですと、0.3カラットの指輪で30万円、0.5カラットで45万円でございます」
どうでしょう、ずいぶん印象が違いませんか?
この2個目の例が、『ハイブランド企業に学ぶ 仕事が変わる「感性」の磨き方』の中でも一番うなった部分です。
ハイブランド、すごい。この記事を書いていて、コミュニケーションの根底に、自分たちの提供する商品・サービスの価値への自信と、それゆえの落ち着きがあることが鍵なのかもなと思い始めました。
最後に、競合他社の話をどうポジティブに話題にするかの例も紹介させてください。
例えば、Aブランドのお店で、「先日、Bブランドも見てきたの」と伝えて、反応を見ます。
「さようですか」とスルーしてもいけないし、
「Bブランドは最近よい評判を聞きませんね」などとケチをつけては、もちろんいけません。
「あちらのブランド、ステキですよね」と同調するだけでもうまくない。競合ブランドのことや、お客様がそこに関心をもっていることをけなすことなく、自分たちの特徴をしっかり伝える必要があります。「そういえば、Bさんは今シーズン、○○をモチーフにした商品をお出しですよね」
そうコメントすれば、ちゃんとアンテナを張って勉強していることが伝わります。
「Bさんは○○がお得意ですので、商品もボリューム感がありますね。私どもはブランドの発祥からも、繊細なデザインを得意としておりますので、今回のエレガントな装いに合わせて、というお客様のニーズにぴったりだと思います」
競合ブランドの長所も褒めつつ、あなたには私たちのブランドの方が、なぜお勧めかというポイントをしっかり伝えます。
どうです? 今週末は皆さんも、「感性トレーニング」として、あなたの街の百貨店に出かけてみられてはいかがですか?
大串さんの本も、接客業や営業職などダイレクトに関わる仕事だけでなく、翻訳者などコミュニケーションの業務に占める割合が一見少なそうに見える職種の方にも是非手に取ってみてほしい一冊になります。