翻訳会社やローカライゼーションの現場では、500ワード以下の小規模な案件でも、これを「プロジェクト」と呼ぶことが多いです。
役職としても、プロジェクト管理を行うプロジェクトマネージャーやプロジェクトコーディネーターが存在します。
一般的に思い浮かべるプロジェクトの規模からすると少し小さいものも含まれますが、ローカライゼーション業界の慣例なのでしょう。
ところで、プロジェクトの対義語に当たるものって何か、皆さんは即答できますか?
社内翻訳者・レビュアーとして働いていると、言語関係の業務以外にどうしてもプロジェクト管理の面にも携わることがあり、昨年はプロジェクトマネジメントの入門書を何冊か読みました。
その中の一冊、通勤大学の『プロジェクトマネジメント-理論編』を読んでいるときに、プロジェクトが定常業務 (ルーチンワーク、オペレーション) と対になるものだということを初めて知ることができました。
これは、世界で最も普及しているプロジェクトマネジメントのガイドブック PMBOK の公式見解のようです。
PMP 試験でも、一定の業務が説明された後、「これは、プロジェクトか、定常業務か?」と尋ねる問題がよく出題されるそうです。
それぞれの定義を引用すると、
「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期の業務である」
「定常業務は、継続的で反復的である。定常業務は継続的業務や、同じ成果物を繰り返し、同じプロセスで同じやり方で継続的に生み出すものである」
とのことです。
正直、毎日翻訳業務に携わっている立場からすると、翻訳も限りなく定常業務に近いと感じる場面もなくはないのですが、プロジェクトと定常業務という対を意識することで、日々の翻訳案件で定常業務らしくない部分=標準化できていない部分はどこだろう?と考える癖がついたのは自分にとって大きい気づきでした。
またプロジェクトと定常業務を比較して、業務の性格としてはプロジェクトに「業務マニュアルがない」のに対して定常業務には「業務マニュアルがある」としている部分、また人材についてプロジェクトでは「必要な人を集める」のに対して定常業務では「育成する」と書いてあるのも、いろいろ考えさせられます。
指示命令系統も、プロジェクトには3つほどの組織構造の型があるのに対して、定常業務では階層型が基本と書かれていて、これも興味深いです。
もうひとつ、プロジェクトの対義語ではないですが、複数のプロジェクトを「プログラム」と呼ぶことも、この本を読んで得た大きな気付きでしたが、それについてはまた今度。
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