翻訳ラジオ

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英日翻訳での解釈ミスを防ぐ英文法:Evergreen (旧 Forest) の序章で品詞を極める

英日翻訳での解釈ミスを防ぐ英文法:品詞識別の力試し編」で予告していた英文法編です。

そして、じゃじゃーん、『総合英語フォレスト Forest』とその後継とされる『総合英語エバーグリーン Evergreen』を購入しました。

しかし、わざわざ古本で Forest を購入する必要はないですね。

詳細に見比べたわけではないですが、各章の例文や説明もほぼほぼ同じですし、目次で見比べた限り章の構成の変更も Evergreen の方でいくつかの章がPart 1-3 の 3 節構成から Part 1-4 の構成の 4 節構成になっているくらいのようです。

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1.どうせやるなら効率的に:スタートラインまでの早さと効き具合を意識する

 「『英文翻訳術』を読み返す」シリーズをお読みいただいた方はなんとなく察しが付くかもしれませんが、自分は結構せっかちな性格です。

なにせ終章まで残り20章を残した第2章までで(完)にしてしまうくらいですからね。

blog.traradio.com

 

Evergreen を素材に英文法について各シリーズは細く長く続けられればと思うのですが、初回で英文法の一番大切な部分はカバーしてしまいたいと思います。

それはずばり、序章「文の成り立ち (わずか7ページ)」と(第1章は飛ばして)第2章「動詞と文型 (24ページ)」の内容になります。

 

2.10個の品詞、5個の文の要素、5文型

英日翻訳での解釈ミスを防ぐ英文法:品詞識別の力試し編」のまとめでも書きましたが、英文法の強力なところは(仮想的にでも)閉じているところ、文型なら5個、品詞なら10個、文の要素なら5個と、選択肢が閉じていて、必ずどれかに当てはまるところだと思います。

列挙すると、

品詞:名詞、冠詞、代名詞、形容詞、副詞、動詞、助動詞、前置詞、接続し、間投詞の10個

(↓『Evergreen』に次のように10個すべての品詞を含む例文が掲載されていました。)

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 文の要素:主部(S)、述部(V)、目的語(O)、補語(C)、修飾語の5個

 

5文型:5個(と、There + be 動詞とか)

 

そして、この10個の品詞、5個の文の要素、5個の文型という切り分け方が、相互に連関していることがポイントです。

たとえば、5文型の1つ1つの文型は「S+V (+修飾語)」など、文の要素の組み合わせとして表現されます。

また、Evergreen の品詞の説明(pp.11-12)を見るとよく分かるとおり、各品詞ごとにどのような文の要素になれるかが決まっています。

(また、どの品詞とどの品詞がどの順番でくっつけるか・くっつけないかも書いてあります)

品詞識別とは、いってしまえば、品詞⇔文の要素⇔五文型という3種類の切り分け方を行き来しながら、限られた可能性の中で全体の整合性が取れる判断をくだす作業なんですよね。

辞書も参照しますが、辞書でできるのは品詞の絞り込みまでです。

たとえば「cold」は冠詞や助動詞、間投詞、代名詞、接続詞、前置詞ではありえませんが(10個中6個の可能性をつぶしました)、「風邪」の意味の名詞や「寒い」という意味の形容詞の可能性は残ります。

そこから、文の要素や五文型、どのように単語を並べられるか・並べられないかというルールの中で、整合性をとれる解釈を見出すわけです。

 

3.品詞と文の要素のマトリックス

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 というわけで、10個の品詞⇔5個の文の要素の連関表を作成しました。

この表の見方はいろいろあると思うのですが、まず、文の要素についていえば「修飾語」という項目だけがふわっとしてますよね。

カテゴリに分けていくと「その他大勢」的なカテゴリができてしまうと思うのですが、修飾語、というのもこうしたその他が放り込まれるゴミ箱的な枠(までいうと失礼ですが)です。

また、10個の品詞が、実はそれほど対等でないことにも目が行くと思います。

接続詞と間投詞がまず毛色が違いますよね。

そして、冠詞と前置詞も、文の要素の中心にならずに「名詞とくっついて」働くという特性があります。

助動詞も動詞のサポート役。

代名詞も、大きくは名詞側ですね。

 

興味深いことに、ここで挙げた6つの品詞、接続詞 (50個以内?)、間投詞、冠詞、前置詞 (100個以内?)、助動詞 (15個前後)、代名詞は属する単語の数が限られている品詞でもあります。

 

それに対して、名詞、動詞、形容詞、副詞はたくさん存在しますよね。

名詞・代名詞は述部以外で大活躍です(I am a student を「私は学生です」という訳から考えると「学生=student」が述部の構成要素のようですが、ここでの述部はbe動詞の「am」で、「a student」は補語です)。

動詞は、述部担当ですが、動名詞になったり分詞になったりして、述部以外の文の要素にもなれる忍者的なキャラでしょうか。

 

終わりに:英文法の品詞・文の要素・文型のシンプルさに奉仕するその他の文法事項たち

いかがでしょうか? せっかちかつコスパ重視な自分の性格から、可能性が「限られているか?」という観点で10個の品詞、5個の文法要素、5文型という部分にまず着目してみました。

また、品詞の中でも、6個(接続詞、間投詞、冠詞、前置詞、助動詞、代名詞)は単語の数も限られていることにさらっと触れてみました。

 

原則のシンプルさを優先したせいで、マトリックスの部分など、やや詰めが甘いと感じられた方もいるかもしれません。

ただ、これは自分の説明不足だけでなく、英文法の本質にも起因する部分があるのかなあと感じています。

たとえば、動詞というと、to不定詞や動名詞、現在分詞や過去分詞といろいろな説明がありましたが、あれもどれも、品詞⇔文の要素⇔五文型のシンプルさを保つために奉仕する補足説明という性格があるのかなあと思います。

形容詞の限定用法と叙述用法とかも、要は、修飾語になるときと補語になるときという区分を説明するものですし。

第2章まで一気に扱う予定でしたが、文型や自動詞・他動詞などの内容は次回(場合によっては次々回)に移そうと思います。

ただ、文型だけを独立して扱ってもあまり意味がないので、品詞⇔文の要素⇔五文型という観点はしっかり引き継ぎたいと思います。

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